鳥類バイオリソースを用いた形態発生学

当研究室が運営する鳥類バイオサイエンス研究センターでは、高度近交系や遺伝子改変鳥類、また突然変異型のユニークな形質を示す鳥類を多数維持•保存しています。この中には世界中で名古屋大学生命農学研究科だけが所持する貴重な系統が数多く含まれています。本研究では名古屋大学生命農学研究科が所持するこれらの貴重なリソースを用いて、ヒトの生命活動に関わるメカニズムの研究や、ヒト疾患メカニズムの解明に取り組みます。

<最近の成果>

ホモで多指症を発症するウズラの変異体HMMの発症メカニズムの解析

HMM変異体は広島大学の都筑博士より分与されたホモで多指症を発症するウズラの変異体である。多指症はヒトの先天性疾患の中でも高頻度に発症する疾患であるため多指症を発症するメカニズムの解明は急務である。本研究ではHMM変異体を用いて手足の指が多くなる多指症が発症するメカニズムの発生学的解明を試みた。
 骨染色を行いHMM変異体の骨格パターンを解析した結果、HMM変異体の肢芽(手足の原基)では多指になっているだけではなく、指の個性が完全に消失しており、さらに指が形成される自脚領域に加えて、やっ脚、柱脚レベルの骨格パターンも異常になっていることが判明しました。

発生中のHMM変異体の手足の骨格パターン

のホモ個体は胎生致死であるため発生中の骨格パターンをビクトリアブルーで染色して調べた。手足の全ての骨格が短縮し、多指になっていることが分かる。

SHHシグナル伝達に関わる遺伝子の発現パターン
SHHシグナルが細胞に入力すると下流でGli1, Ptch1, Ptch2の遺伝子発現が誘導される。HMM変異体では発現が誘導されていなかった。

そこで実際にSHHタンパク質が作られているのかどうか調べるためにSHHタンパク質を認識する抗体を用いた抗体染色を行った。その結果、SHHタンパク質は肢芽の後側の間充織に野生型と同じ様に局在することが分かりました。この結果から、HMM変異体の肢芽ではリガンドであるSHHタンパク質は存在するが、SHHシグナルを受け取る側の細胞の、細胞内シグナル伝達経路が異常である可能性が考えられました。

SHHタンパク質の免疫化学染色
HMM変異体の肢芽でもSHHタンパク質の存在を示す、緑色のシグナルが観察された。

GLI3タンパク質のウェスタンブロッティング
HMM変異体の肢芽では活性化型のGLI3が異常に蓄積されていた。

今後の期待

 SHHのシグナル伝達の異常は腎臓や肝臓、骨格の異常を引き起こすヒトの“繊毛病”に共通して見られる病態である。今回HMM変異体でも肢芽の細胞における繊毛を調べた結果、繊毛は存在することが分かった。このため、HMM変異体は繊毛形成以外の部分で繊毛病と同じ疾患を呈している可能性が高く、あらたな繊毛病関連のモデル動物となることが期待される。